「くもっているけど やっぱり せんたくしなくちゃね」 いつものように、大量の洗濯物を洗い上げた「かあちゃん」。
干そうと思ったその時、空は曇り、風もヒューヒュー、今にも雨が降ってきそう…
<これじゃあ、洗濯物が干せないじゃないか>
腕組みをしてかんがえる「かあちゃん」…
なんと、奇想天外なアイデアをひねり出します。
<大凧をあげて、雲の上に干せばいい!!!>
子どもたちにも手伝ってもらい、大凧はグングン高く舞い上がっていきます。
「かあちゃん」は次々に洗濯物を干していきました。
やがて、大凧は雲の上に
にょきっと顔を出します。
おまけに、凧の後からは、洗濯物がひらひらゆれて昇っていくのです。
雲の上にいたカミナリたちは、ビックリすりやら、喜ぶやら…
空から落ちてきて「かあちゃん」にお願いします。
「洗ってくれぇ」「干してくれぇ」………
「かあちゃん」は、カミナリたちをゴシゴシ・サッサカ洗っていきます。
そして、洗ってもらったカミナリたちは、どんどん干されて空に舞い上がっていったのでした。
洗濯物をしまおうと、カミナリたちを紐から外してみると…あらビックリ……
乾きすぎて、バリバリ・ゴワゴワに…
でも、そんなことでは動じないのが「かあちゃん」の凄いところです。
<お湯につけて、元に戻せばいいんだよ!>
元に戻ったカミナリたちを、次から次へとタオルで拭いていったので、
またまた、洗濯物の山の出来上がり。
でも大丈夫。「かあちゃん」は云うのです。
<せんたくものなら まかしときな>
以前、遊びに来ていた子どもが、「かあちゃん」の使っている洗濯板がわからず???状態に…
我が家の小さなプラスチックの洗濯板を使って、自分のハンカチを洗濯することになりました。
四苦八苦の末、外に干して、またまた絵本タイム。
天気が良かったので、すぐにパリパリに乾きました。
と、ここまでは良かったのですが…
慌てた声がします。「お湯…お湯…」
カミナリたちのように、元に戻したかったようです。
取り敢えず、お湯につけて、もう一度干して、パリパリになる前に取り込んで渡しました。
絵本トモのママさんと、顔を見合わせて大笑い(失礼…)
でも、そこまで真剣に絵本の世界を楽しんでくれた事に、ひたすら感謝です。
洗濯板で一枚ずつ丁寧に心を込めて洗い上げる。
そう言えば、おばあちゃんが生きていたころ、洗濯機があるのに、なぜか洗濯板で洗っていたっけ…
きっと、「かあちゃん」の太い腕は、愛情のたまものなのでしょうね。
雲の上に帰って行くカミナリたちを、笑顔で見送りながら「かあちゃん」は云います。
<せんたくされに また おいで。
あめでも はれでも まかしときぃ!> 

作・絵 : さとう わきこ
発行所 : 株式会社福音館書店
2002年4月1日 こどものとも 発行
2006年6月25日 こどものとも傑作集 第1刷発行